DHCPとは?仕組み・設定方法・トラブル対処法をわかりやすく解説
公開日:
最終更新日:
8 views
はじめに
この記事では、DHCPの役割やIPアドレス配布の手順、固定IPとの使い分け、リース期間の考え方を解説します。さらに、リレーエージェントやDHCPv6、現場のトラブル対処法もRFCの記述に沿って整理します。
DHCPとは?IPアドレスを自動で割り当てる仕組み

DHCPは、ネットワークに接続した機器へ、通信に必要な設定情報を自動的に配布するプロトコルです。ここでは役割と成り立ちを整理します。
DHCPが解決するのは「手動設定」の手間と重複リスク
IPアドレス(Internet Protocol address)は、ネットワーク上で機器を識別するための番号です。インターネット通信を行うには、IPアドレスだけでは足りません。同じネットワークの範囲を示すサブネットマスク、外部への出口となるデフォルトゲートウェイ、名前解決を担うDNS(Domain Name System)サーバーのアドレスなどの設定も機器ごとに不可欠です。
これらを一台ずつ手動で設定すると、台数に比例して作業量が膨らみ、同じアドレスを二重割り当てするミスも多発します。DHCPは、この設定情報をサーバー側で一元管理し、接続した機器へ自動的に配布することで負担を減らす仕組みです。
総務省の令和7年版情報通信白書によると、2024年時点の世帯保有率はスマートフォンが90.5%、パソコンが66.4%となっています。家庭内でも複数機器の同時接続が当たり前となり、自動割り当ての必要性は家庭用ルーターでも高まっています。
- 出典:総務省「令和7年版情報通信白書」
- 参照ページタイトル:総務省|令和7年版情報通信白書|情報通信機器・端末
- URL:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd21b110.html
DHCPが配布する主な設定情報
DHCPで配布できる設定項目は「DHCPオプション」として番号で定義されており、RFC 2132「DHCP Options and BOOTP Vendor Extensions」に一覧が示されています。代表的なものは次のとおりです。
|
オプション番号 |
名称 |
内容 |
|
1 |
Subnet Mask |
サブネットマスク |
|
3 |
Router |
デフォルトゲートウェイ |
|
6 |
Domain Name Server |
DNSサーバーのアドレス |
|
51 |
IP Address Lease Time |
IPアドレスの貸出期間 |
|
58 |
Renewal (T1) Time Value |
更新開始までの時間 |
|
59 |
Rebinding (T2) Time Value |
再バインド開始までの時間 |
IPアドレスだけでなく、通信に必要な周辺情報を一括取得できるのがDHCPの利点です。機器側は設定内容を反映するだけで、すぐに通信を行えます。
- 出典:IETF RFC 2132: DHCP Options and BOOTP Vendor Extensions(1997年3月)
- 参照ページタイトル:RFC 2132: DHCP Options and BOOTP Vendor Extensions
- URL:https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc2132
DHCPはBOOTPを拡張して生まれた
DHCPの土台になっているのは、1985年9月に公開されたRFC 951「Bootstrap Protocol (BOOTP)」です。BOOTPは、ディスクを持たない端末が起動時に自分のIPアドレスを知るための仕組みでした。
DHCPの規格であるRFC 2131は、この関係を「DHCP is based on the Bootstrap Protocol (BOOTP), adding the capability of automatic allocation of reusable network addresses and additional configuration options」と説明しています。つまりDHCPとは、BOOTPに「再利用できるアドレスの自動割り当て」と「配布できる設定項目の追加」を加えたプロトコルです。
両者の互換性を保つため、DHCPのメッセージはBOOTPと同じ書式を使い、オプション領域の先頭にマジッククッキーと呼ばれる4オクテットの目印を置きます。値は10進表記で99.130.83.99、16進表記で0x63825363です。
出典:RFC 951: ブートストラッププロトコル|RFCエディター
DHCPサーバーの役割と「DORA」と呼ばれる4ステップ
DHCPサーバーは配布可能なIPアドレスの範囲や貸出状況を管理し、DHCPクライアント(PCやスマホ、プリンター等)は設定情報を受け取る役割を担います。ここでは、この2者がやり取りする4段階の手順を順に見ていきます。
ステップ1:DHCPDISCOVER(サーバーを探す)
ネットワーク接続直後のクライアントは、自身のIPアドレスもDHCPサーバーの所在も把握できていません。そこでDHCPDISCOVERをブロードキャストで送信し、応答できるサーバーを探します。RFC 2131はこのメッセージを「Client broadcast to locate available servers」と定義しています。
ステップ2:DHCPOFFER(アドレスの候補を提示する)
DHCPDISCOVERを受け取ったサーバーは、貸し出せるIPアドレスと関連する設定をDHCPOFFERとして返します。規格上の定義は「Server to client in response to DHCPDISCOVER with offer of configuration parameters」です。クライアントはまだIPアドレスを持たないため、この応答はブロードキャスト、またはクライアントのハードウェアアドレス宛のユニキャストで届きます。
ステップ3:DHCPREQUEST(使用するアドレスを正式に要求する)
複数のサーバーからDHCPOFFERが返る構成もあるため、クライアントは使用する1つを選び、DHCPREQUESTで正式に要求します。このメッセージはブロードキャストで送られ、選ばれなかったサーバーに対しては、提示を辞退したことが同時に伝わります。
RFC 2131はDHCPREQUESTの用途を、提示された設定の要求、再起動後のアドレス確認、リース延長の3点に整理しています。このメッセージが、初回取得と更新の双方で使われる点は重要です。
ステップ4:DHCPACK(サーバーが確定を通知する)
最後にサーバーがDHCPACKを返し、割り当てが確定します。定義は「Server to client with configuration parameters, including committed network address」です。クライアントはこのDHCPACKを受け取った時点で、IPアドレスやDNSサーバーの設定を反映し、通信を開始できます。
この4段階は、各頭文字からDORA(Discover・Offer・Request・Ack)と総称されます。図解される機会が多いプロセスのため一見複雑ですが、実際は「探す→提示される→要求する→確定する」という一方向のシリアルなやり取りで、順序の入れ替えは起きません。
DHCPが使うUDPポート番号は67と68
DHCPはUDP(User Datagram Protocol)上で動作します。RFC 2131は「DHCP messages from a client to a server are sent to the 'DHCP server' port (67), and DHCP messages from a server to a client are sent to the 'DHCP client' port (68)」と規定しています。具体的には、クライアントからサーバーへの通信に宛先ポート67、逆方向の通信に宛先ポート68を用います。この2つはBOOTPから引き継いだ番号で、ファイアウォールでDHCPの通信を許可する際にも指定します。
DORA以外に用意されているメッセージ
DHCPには、4ステップ以外にも状況に応じたメッセージが定義されています。トラブルの切り分けでは、これらの役割の把握が迅速な解決に直結します。
|
メッセージ |
方向 |
役割 |
|
DHCPDECLINE |
クライアントからサーバー |
そのアドレスは既に使用中であると通知する |
|
DHCPNAK |
サーバーからクライアント |
クライアントが主張するアドレスが不正、またはリース切れであると通知する |
|
DHCPRELEASE |
クライアントからサーバー |
アドレスを返却し、残りのリースを取り消す |
|
DHCPINFORM |
クライアントからサーバー |
既にIPアドレスを持つ機器が、周辺の設定情報のみを問い合わせる |
たとえば、別ネットワークへ移動した端末が以前のアドレスを要求した場合、サーバーはDHCPNAKを返します。クライアントはこれを受けて初期状態へ戻り、DHCPDISCOVERから再試行します。
出典:RFC 2131: 動的ホスト構成プロトコル|RFCエディター
動的IPアドレスと固定IPアドレスの違いと使い分け
IPアドレスの割り当て方には、DHCPによる自動割り当て(動的IPアドレス)と機器側で固定する方式(静的IPアドレス)が存在します。優劣ではなく、用途に応じた使い分けが基本です。
動的IPアドレスが向いているケース
動的IPアドレスは、接続する機器の入れ替わりが多い環境に向いています。来客用のWi-Fiや、社員の私物端末が接続するネットワークのように、台数も顔ぶれも変わる場面では、接続のたびに管理者が対応する必要がなくなります。
ただし、割り当てられるアドレスは常に同じとは限りません。端末の再接続やリース期間の満了時には、前回と異なるIPアドレスが割り当てられかねません。外部から特定の機器へアクセスする用途では、これが大きな制約となります。
固定IPアドレスが向いているケース
固定IPアドレスは、社内のファイルサーバー、プリンター、ネットワークカメラ、ネットワーク機器の管理インターフェースなど、常に同じアドレスで参照したい機器に適しています。アドレスが変わらないため、接続先の設定を書き換える手間が生じません。
固定IPアドレスを使う場合は、DHCPの自動配布範囲との重複を避けて設計します。範囲が重なると、手動設定したアドレスがDHCPからも割り振られ、アドレス競合を引き起こします。
なお、社内ネットワークで使うアドレスの多くは、RFC 1918「Address Allocation for Private Internets」がプライベートアドレスとして定めた範囲から選びます。定義されている範囲は10.0.0.0から10.255.255.255、172.16.0.0から172.31.255.255、192.168.0.0から192.168.255.255の3つです。
出典:RFC 1918: プライベートインターネットのアドレス割り当て|RFCエディター
DHCP予約(バインディング)という第三の選択肢
両者の中間にあたるのが、DHCP予約(バインディング)です。機器固有の識別番号であるMAC(Media Access Control)アドレスとIPアドレスを、サーバー側で対応付けておく方式です。その機器が接続するたびに、同じアドレスが配布されます。
機器側は自動取得のままでアドレス管理をサーバーに集約できるため、設定変更を一元化できます。これはプリンターやNAS(Network Attached Storage)など、小台数かつアドレスを固定したい機器に最適な手法です。
|
方式 |
設定場所 |
アドレスの安定性 |
主な用途 |
|---|---|---|---|
|
動的IPアドレス |
サーバー側で範囲を指定 |
変わる場合がある |
パソコン、スマートフォン、来客端末 |
|
DHCP予約 |
サーバー側で個別に指定 |
同じアドレスが配布される |
プリンター、NAS |
|
固定IPアドレス |
機器側で個別に指定 |
変わらない |
サーバー、ネットワーク機器 |
プライベートアドレスとDHCPが広く使われる背景
DHCPが前提とするアドレスの使い回しは、IPv4アドレスの在庫状況とも関係します。JPNICによると、グローバルにアドレスを管理するIANAで新規割り振り分が枯渇したのは2011年2月3日です。同レポートによると、アジア太平洋地域を担当するAPNICでも同年4月15日に通常の割り振りが終了しました。
限られたグローバルアドレスを効率運用するため、LAN内ではプライベートアドレスを用い、DHCPで自動配布する構成が定着しました。リースによって使われなくなったアドレスを回収できる点も、限られた範囲を使い回すうえで効果的です。
DHCPのリース期間と更新の仕組み(T1・T2)
DHCPで配布されるIPアドレスは、譲渡ではなく一定期間の貸出です。この期間をリース期間と呼び、クライアントは期間中そのアドレスを使い続けられます。更新のタイミングは規格で明確に定められています。
更新はT1(50%)、再バインドはT2(87.5%)から
RFC 2131は、更新に関わる2つのタイマーの既定値を「T1 defaults to (0.5 * duration_of_lease). T2 defaults to (0.875 * duration_of_lease).」と定めています。つまりT1はリース期間の50%、T2は87.5%が経過した時点であり、更新はリース満了の直前ではなく、期間の半分を過ぎた時点から始まります。
T1を過ぎるとクライアントはRENEWING状態に移り、アドレスを貸し出したサーバーへユニキャストでDHCPREQUESTを送ります。ここでDHCPACKが返れば、新しい満了時刻を計算して通常の状態に戻ります。
T1からT2の間に応答が得られない場合、クライアントはREBINDING状態に移り、今度は任意のサーバーへ向けてDHCPREQUESTをブロードキャストします。元のサーバーが停止していても、別のサーバーが応答できれば通信を続けられる設計です。
それでも応答なくリース期間が満了すると、クライアントはINIT状態へ戻り、該当アドレスの通信を停止してDHCPDISCOVERから再開します。期限切れと同時に通信が切断されるのは、この規定が理由です。
|
タイマー |
既定値 |
状態 |
送信方法 |
|---|---|---|---|
|
T1 |
リース期間の50% |
RENEWING |
元のサーバーへユニキャスト |
|
T2 |
リース期間の87.5% |
REBINDING |
任意のサーバーへブロードキャスト |
|
リース満了 |
リース期間の100% |
INIT |
DHCPDISCOVERからやり直す |
出典:RFC 2131: 動的ホスト構成プロトコル|RFCエディター
リース期間を決めるときの考え方
リース期間を短く設定すると、離脱した端末のアドレスが早期回収され、プールを効率運用できます。短時間接続が頻発するオフィスやイベント会場に最適ですが、更新の通信負荷は増加します。
リース期間を長くすると、更新のやり取りは減り、同じアドレスが安定して使われます。ただし、使われなくなったアドレスの回収が遅れるため、配布範囲に余裕がないと空きが不足する場合があります。
DHCPの設定方法(家庭用ルーターと企業ネットワーク)

DHCPの設定項目は、家庭用ルーターと企業ネットワークで共通する部分と、規模に応じて増える部分があります。ここでは両者を分けて確認します。
家庭用ルーターでの設定項目
家庭用のWi-FiルーターはDHCPサーバー機能を備えており、多くの製品では初期状態で有効になっています。管理画面から確認・変更できる主な項目は次のとおりです。
- DHCPサーバー機能の有効・無効
- 配布するIPアドレスの範囲(アドレスプール)
- リース期間
- 配布するDNSサーバーのアドレス
- DHCP予約(MACアドレスとIPアドレスの対応付け)
同じネットワークに複数のDHCPサーバーが存在すると、意図しない設定が配布される場合があります。ルーターを追加する際は、片方のDHCPサーバー機能を無効にする構成が基本です。
企業ネットワークでのスコープ設計と除外設定
企業ネットワークでは、専用サーバーにDHCP機能を持たせ、複数のサブネットやVLAN(Virtual LAN)へ一括配布する構成が主流です。設定単位には、サブネットごとの範囲(スコープ)を用います。
除外設定は、スコープの中で自動配布の対象から外すアドレスを指定する機能です。たとえば、配布範囲を192.168.1.100から192.168.1.200とし、192.168.1.2から192.168.1.99は固定IPアドレス用に確保しておく、といった設計が行われます。除外設定を先に決めておくことで、手動設定のアドレスとDHCPが配布するアドレスの重複を防げます。
配布するオプションの内容も、スコープごとに調整します。拠点ごとにデフォルトゲートウェイやDNSサーバーが異なる場合は、スコープ単位で異なる値を配布します。
冗長化とバックアップの考え方
DHCPサーバーが停止すると、新規に接続する端末はアドレスを取得できません。そのため、業務ネットワークでは2台構成にして片方の停止に備える、いわゆるフェールオーバーの構成が採られることがあります。実装や名称は製品によって異なるため、導入時は仕様を確認してください。
あわせて、スコープ設定とリース情報を定期バックアップしておけば、障害時の迅速な復旧が可能です。運用時は配布済みアドレスの空き状況を監視し、枯渇を未然に防ぎます。
DHCPリレーエージェントとDHCPv6
ここでは、サブネットをまたぐ配布を可能にするリレーエージェントと、IPv6環境で用いるDHCPv6を取り上げます。
リレーエージェントがブロードキャストの壁を越える
DHCPDISCOVERはブロードキャストで送られますが、ブロードキャストは通常ルーターを越えません。そのままではサブネットごとにDHCPサーバーが必要になります。
これを解決するのがDHCPリレーエージェントです。RFC 2131では「A BOOTP relay agent or relay agent is an Internet host or router that passes DHCP messages between DHCP clients and DHCP servers.」と定義されています。リレーエージェントは、クライアントからのブロードキャストを受け取り、別のサブネットにあるDHCPサーバーへユニキャストで転送します。
このとき、リレーエージェントはDHCPメッセージのgiaddrフィールドに自分のIPアドレスを設定します。サーバーはgiaddrの値を見て、どのサブネット向けのアドレスを配布すべきかを判断します。1台のDHCPサーバーで複数サブネットを一括管理できるのは、この仕組みのおかげです。多くのルーターやレイヤー3スイッチでは、転送先のサーバーアドレスを指定する設定項目として実装されています。
リレーエージェント情報オプション(オプション82)
リレーエージェントが情報を付加する仕組みとして、RFC 3046「DHCP Relay Agent Information Option」がオプション82を定義しています。含まれるサブオプションは、要求がどの回線から届いたかを示すAgent Circuit ID(サブオプション1)と、接続元を識別するAgent Remote ID(サブオプション2)です。
サーバーはこの情報を手がかりに、接続元に応じたアドレスの配布や、割り当ての制御を行えます。
出典:RFC 3046: DHCPリレーエージェント情報オプション|RFCエディター
DHCPv6はメッセージ名もポート番号も異なる
IPv6環境で使うDHCPv6は、2018年11月公開のRFC 8415「Dynamic Host Configuration Protocol for IPv6 (DHCPv6)」で規定されています。同RFCは、それ以前の規格であったRFC 3315などを廃止して内容を統合したものです。
DHCPv4との違いは名称にとどまりません。DHCPv6ではクライアントがUDPポート546、サーバーとリレーエージェントがUDPポート547を使用します。メッセージ名もDORAとは異なり、Solicit、Advertise、Request、Replyの4つのやり取りが基本です。Rapid Commitオプションを用いる場合は、SolicitとReplyの1往復で設定が完了します。
また、DHCPv6はブロードキャストではなくマルチキャストを採用しています。クライアントが近隣のリレーエージェントやサーバーを探す際は、宛先アドレスにAll_DHCP_Relay_Agents_and_Servers(ff02::1:2)を使用します。
|
項目 |
DHCP(IPv4) |
DHCPv6 |
|---|---|---|
|
規格 |
RFC 2131 |
RFC 8415 |
|
クライアントのポート |
68 |
546 |
|
サーバーのポート |
67 |
547 |
|
主なメッセージ |
DHCPDISCOVER / DHCPOFFER / DHCPREQUEST / DHCPACK |
Solicit / Advertise / Request / Reply |
|
探索の宛先 |
ブロードキャスト |
マルチキャスト(ff02::1:2) |
出典:RFC 8415: IPv6用動的ホスト構成プロトコル (DHCPv6)|RFCエディター
DHCPのセキュリティ上の注意点と対策

利便性の高いDHCPですが、設計上の前提として注意すべき点があります。ここではリスクと、一般的に採られる対策を整理します。
不正なDHCPサーバーが混入するリスク
DHCPは、クライアントが最初に応答したサーバーの情報を受け入れる仕組みです。そのため、同じネットワークに管理外のDHCPサーバーが接続されると、誤ったデフォルトゲートウェイやDNSサーバーが配布されるおそれがあります。
RFC 2131自身も、セキュリティに関する検討事項として、DHCPには認証の仕組みが組み込まれていない点を挙げています。悪意の有無を問わず、設定ミスのルーターを繋ぐだけでも同種の障害を引き起こします。
DHCPスヌーピングによる対策
対策として広く用いられるのが、スイッチ側でDHCPの通信を監視するDHCPスヌーピングです。管理者が指定した信頼できるポート以外から届いたDHCPOFFERやDHCPACKを破棄することで、管理外のサーバーからの配布を遮断します。
この考え方はIETFでも規格化が進められており、2015年5月公開のRFC 7513「Source Address Validation Improvement (SAVI) Solution for DHCP」が、DHCPのやり取りを監視してIPアドレスと接続点の対応を記録する手順を定めています。あわせて、機器やソフトウェアの最新化を維持し、不要ポートを開放しない運用も不可欠な対策となります。
出典:RFC 7513: DHCPの送信元アドレス検証改善 (SAVI) ソリューション|RFCエディター
よくあるトラブルと対処法
最後に、DHCPに関して現場で起きやすい事象と、確認の手順を紹介します。切り分けは、機器側とサーバー側のどちらに要因があるかを分ける発想で進めると整理しやすくなります。
IPアドレスが「169.254」で始まる値になっている
IPアドレスが169.254で始まる値になっている場合、DHCPサーバーからの応答が得られず、機器が自分でリンクローカルアドレスを設定した状態と考えられます。Windowsでは、この動作をAPIPA(Automatic Private IP Addressing、自動プライベートIPアドレス割り当て)と呼びます。
この動作はRFC 3927「Dynamic Configuration of IPv4 Link-Local Addresses」で規定されており、169.254.0.0/16の範囲が予約されています。同RFCは、先頭の256個と末尾の256個を将来のために予約しており、実際に選択できる範囲は169.254.1.0から169.254.254.255です。
リンクローカルアドレスは同じネットワーク内の通信にしか使えず、ルーターを越えて転送されません。この状態は、DHCPの通信が届いていないサインです。ケーブルやWi-Fiの接続状態、DHCPサーバー機能の有効・無効、配布範囲の空き状況を上から順に確認します。
出典:RFC 3927: IPv4リンクローカルアドレスの動的構成|RFCエディター
IPアドレスの重複が起きる
同一のIPアドレスを持つ機器が複数存在すると、正常な通信が行えなくなります。多くの場合、手動で設定した固定IPアドレスが、DHCPの配布範囲と重なっていることが原因です。除外設定や配布範囲を見直し、固定IPアドレス用の領域と分けて設計し直します。
クライアントが割り当てられたアドレスの重複を検知した場合、DHCPDECLINEをサーバーへ送り、そのアドレスの使用を取りやめます。サーバー側のログにDHCPDECLINEが記録されているときは、重複が発生している可能性を疑うとよいでしょう。
想定と異なる範囲のアドレスが配布される
配布されるアドレスがスコープの想定と異なる場合は、スコープの設定と除外設定を確認します。複数のスコープを運用している環境では、リレーエージェントが設定したgiaddrの値に応じてサーバーが配布元を選ぶため、リレーエージェント側の設定も確認の対象になります。
管理外のDHCPサーバーが応答している可能性も考えられます。端末が取得したDHCPサーバーアドレスが、自社管理のサーバーと合致しているか確認しましょう。
切り分けに使えるコマンド
Windowsでは、ipconfig /all で現在のIPアドレスと応答したDHCPサーバーのアドレス、リースの取得日時と有効期限を確認できます。ipconfig /release で割り当てを解放し、ipconfig /renew で取得をやり直せます。
再取得で解決しない場合は、サーバー側のログを確かめます。要求自体が届いていなければ経路やリレーエージェントの設定、届いているのに配布されていなければ配布範囲の空き状況、という順序で原因を特定できます。
まとめ
DHCPは、ネットワークに接続した機器へIPアドレスやサブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーのアドレスなどを自動的に配布するプロトコルです。RFC 2131で規定されており、BOOTPを拡張して再利用可能なアドレスの自動割り当てを実現しています。
アドレスが配布されるまでの流れは、DHCPDISCOVER、DHCPOFFER、DHCPREQUEST、DHCPACKの4段階で、頭文字からDORAと呼ばれます。通信にはUDPポート67と68を使用します。配布されたアドレスはリース期間付きの貸出で、期間の50%でT1、87.5%でT2のタイマーが動き、更新や再バインドが行われます。
用途に応じて、動的IPアドレス、DHCP予約、固定IPアドレスを使い分ければ、管理の効率化と通信の安定性を両立できます。サブネットをまたぐ配布にはリレーエージェントを、IPv6環境ではRFC 8415に基づくDHCPv6を用います。
一方で、DHCPには認証の仕組みがないため、管理外のDHCPサーバーが混入するリスクがあります。DHCPスヌーピングなどの対策とあわせて運用することが、安定した通信環境の維持につながります。
よくある質問(FAQ)
Q1. DHCPとは何の略ですか。
A1. DHCPはDynamic Host Configuration Protocolの略で、日本語では動的ホスト構成プロトコルと訳されます。仕様はRFC 2131で定義されており、ネットワークに接続した機器へIPアドレスなどの設定情報を自動的に配布するためのプロトコルです。
出典:RFC 2131: 動的ホスト構成プロトコル|RFCエディター
Q2. DORAとは何ですか。
A2. DORAは、DHCPでIPアドレスが割り当てられるまでの4つのメッセージ、DHCPDISCOVER、DHCPOFFER、DHCPREQUEST、DHCPACKの頭文字を並べた呼び方です。この順序が入れ替わることはありません。
Q3. DHCPが使うポート番号を教えてください。
A3. RFC 2131の規定により、クライアントからサーバーへの通信は宛先ポート67、サーバーからクライアントへの通信は宛先ポート68を使用します。いずれもUDPです。IPv6向けのDHCPv6では、RFC 8415によりクライアントがポート546、サーバーとリレーエージェントがポート547を使用します。
出典:RFC 8415: IPv6用動的ホスト構成プロトコル (DHCPv6)|RFCエディター
Q4. リース期間はどのくらいに設定すればよいですか。
A4. 一律の正解はなく、端末数と接続の入れ替わり頻度で判断します。短時間接続の多い環境では短めにしてアドレス回収を早め、同一端末が常時接続する環境では長めにして更新負荷を減らす設計が基本です。なお更新はリース満了時ではなく、RFC 2131の規定によりリース期間の50%を過ぎた時点(T1)から始まります。
出典:RFC 2131: 動的ホスト構成プロトコル|RFCエディター
Q5. IPアドレスが169.254で始まるのはなぜですか。
A5. DHCPサーバーから応答が得られなかったため、機器が自分でリンクローカルアドレスを設定した状態です。RFC 3927により169.254.0.0/16が予約されており、Windowsではこの動作をAPIPAと呼びます。この範囲のアドレスはルーターを越えて転送されないため、まずはDHCPサーバーとの通信が成立しているかを確認してください。
出典:RFC 3927: IPv4リンクローカルアドレスの動的構成|RFCエディター
Q6. DHCP予約と固定IPアドレスはどちらを使うべきですか。
A6. アドレスの管理をサーバー側に集約したい場合はDHCP予約が適しています。一方、DHCPサーバーが停止していてもアドレスを保持させたい機器や、ネットワーク機器自身の管理用アドレスには固定IPアドレスが向いています。
Q7. 家庭用ルーターを2台使う場合に注意することはありますか。
A7. 同じネットワークに複数のDHCPサーバーが存在すると、どちらが応答するかは状況によって変わります。2台目をアクセスポイントとして使う場合は、そちらのDHCPサーバー機能を無効にする構成が基本です。設定変更の手順は、利用する機器の取扱説明書を確認してください。
監修者
横浜国立大学理工学部卒。
株式会社DYMに新卒一期生として2011年に入社し、WEBプロモーションなどのデジタルマーケティング領域で業務に従事し、その後新規事業立ち上げを経験。
2015年よりDYMの人事部へ異動し人事領域を統括、毎年多くの就活生や求職者との面接・面談を実施。
内定チャンネルなどの採用関連メディアへの出演や記事監修を通して人事・人材関連の情報を発信中。
関連コラム
人気のコラム
カテゴリー
タグ
- #事務職
- #派遣社員
- #正社員
- #未経験
- #給与
- #転職
- #総務
- #キャリアアップ
- #営業事務
- #医療事務
- #経理事務
- #人事事務
- #総務事務
- #貿易事務
- #秘書事務
- #特許事務
- #受付事務
- #不動産事務
- #法務事務
- #学校事務
- #外勤事務
- #一般事務
- #広報事務
- #自由業
- #ホワイトハッカー
- #委託
- #委任
- #フリーランス
- #個人事業主
- #エンジニア
- #プログラマー
- #イラストレーター
- #資格
- #報酬
- #セキュリティエンジニア
- #インフラエンジニア
- #JAVA
- #Qiita
- #NET Framework
- #CCNA
- #Oracle
- #AWS
- #自営業
- #日商
- #mos
- #勉強時間
- #アルゴリズム
- #SNS
- #プログラミング
- #OSPF
- #プロトコル
- #Word
- #WEBアプリケーション
- #ルーティング
- #高卒
- #ボーナス
- #Linux
- #OS
- #履歴書
- #職務経歴書
- #第二新卒
- #新卒
- #中途
- #アプリ
- #ネットワーク
- #ソフトウェア
- #オープンソース
- #クラウド
- #ファイアウォール
- #サイバー攻撃
- #セキュリティ
- #API
- #AI
- #オープンソースソフトウェア
- #Docker
- #マイクロサービス
- #介護事務
- #庶務
- #定時
- #残業
- #産後
- #産休・育休
- #復職
- #選考対策

